大切に愛用されたミナ ペルホネンの洋服をリメイクするプロジェクト「remix」は、展覧会「つぐ minä perhonen」のために企画されました。2026年1月10日にはトークイベント「つくるきもち・つかうきもちーremixをめぐってー」が第一会場である世田谷美術館で行われ、ミナ ペルホネンの創設者でデザイナーの皆川 明、デザイナーで代表の田中景子、創設メンバーでありプレスの長江青が展示室だけではお伝えできなかった想いやエピソードを語りました。この記事ではトークイベントの内容の一部をお伝えします(聞き手:世田谷美術館学芸員の加藤絢)。
「つぐ minä perhonen」remixの展示 東京会場
photo: Manami Takahashi
――「つぐ minä perhonen」展の中でも洋服のリメイクプロジェクト「remix」にフォーカスします。まずはどんなプロジェクトか、ご説明からお願いします。
長江:展示の最後のエリアに「remix」という展示があります。お客様にご愛用いただいている洋服で、何かしらの理由でお直しが必要になったものなどを公募しまして、217着のご応募の中から12着を実際にミナ ペルホネンがリメイクしました。
サイズの変化や、着用の中で傷みが出たり、何かしらのお直しが必要になったものを、皆川と愛用者の方とで対面またはオンラインで対話を重ねて、リメイク時にどのようなデザインを加えるか、ミナ ペルホネンとして向き合ったのが「remix」です。展示室の周りには、ご応募いただいたけれど本展の企画内でのリメイクには至らなかった洋服の写真も展示しています。
「つぐ minä perhonen」remixの展示 東京会場(世田谷美術館)
photo: Manami Takahashi
――2019年に東京都現代美術館で始まって、全国を巡回した「つづく」という展覧会でも、愛用者に参加いただくコーナーがありましたね。
皆川:はい。2019年の展覧会「つづく」の時に「土」という展示エリアを設けました。それも、展示構成の中で最後の部屋でした。そこでは、洋服が作り手から愛用者の手に渡ったあとで、時間を経て思い出をともにすることでユニークピースに変化していくことを展示しました。
「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」土の展示 青森会場
photo: Manami Takahashi
それを踏まえて、今回の「つぐ」では、お客様が長く着てくださった服を、より長く着ていくために、これからの洋服を一緒に作っていくプロジェクトにしたいと考えました。今までもブランドとしてリペアやリサイズはしていましたが、展示にむけたプロジェクトとして、デザイン的な変化を持たせてリメイクしました。
――展示では、左側にお直しする前の洋服の写真が展示されていて、真ん中に洋服の思い出やリクエスト、皆川さんのデザイン画が示され、右側に実際にリメイクした洋服が展示されています。ここからは、実際に一つひとつリメイクをされた時のエピソードをお伺いしていきたいと思います。まず、こちらの“swan”のスカートです。
長江:2006年にこのスカートをご購入くださったお客様が、だんだん体のサイズが変わって、そのうちにこのスカートをあまり着なくなっていたと。また、丈も最近着ている服と比べると短いので、もう少し長くなると今の自分でも着やすいということで応募いただきました。
“swan”スカート リメイク前の写真
photo: Yasutomo Ebisu
――Aラインで結構体にそうようなシルエットだと思うんですが、もう20年近く前のことですから。20歳だったとしても、40歳、30歳だったとしても50歳になっていて、私自身に置き換えてみても、履いた時のシルエットが気になるというのはすごく分かります。
皆川:「幅のサイズ出し」と「丈を出す」という2つのことを叶えるためなら、少し特別なデザインにしても良いと言っていただきました。いったんスカートを分割して、幅を出すことを試みて、上の方に黒いキルティングのパーツを加えることで着丈を出しました。そして、Aラインから少しフレアを持たせて、全体にゆとりのあるものというサイズ感にすることと同時に、フリルのパーツをつけることで、より大胆で少し楽しい印象に仕上がりました。
“swan”スカート リメイク後の写真
photo: Yasutomo Ebisu
「黒いドレスを纏った白鳥」というテーマがあったので、そのスワンが羽ばたいているようなフリルを付け加えました。結構大胆にデザインを加えましたが、リクエストの条件を満たしながら、こちらで新しいデザインを加えるというのは、とてもやりがいのあることでした。しかも既製服をお客様と一緒に作り直していくことは本当に特別な作業になりました。
――このウェストとフリルの部分は同じ布なんですよね。
皆川:そうですね。ウェストサイズを出す方法として、元のスカートの上の方の数センチをカットして、ウェストラインを広げるためのパーツとしてキルティングを加えました。1着のスカートとしてのまとまりを出すために、キルティングとフリルのパーツは同じ素材で作りました。
――同じ素材で一方にはお馴染みの“tambourine”の刺繍がされていますが、それぞれ全く異なる素材に私には見えます。
皆川:そうですね。そういう表情の変化ということも意識しながら、進めました。
――もとのデザインでも、このスワンがネックレスをしていますね。
皆川:ネックレスの部分が立体的に動き、揺れるように作られています。ですので、スカート全体にも動きを持たせた仕上がりになるといいなという思いでご提案しました。
――次もスカートですね。
長江:“forest”という柄のスカートです。下の方のキャメル色の部分は、当時「玉ねぎの皮みたいな素材を作りたいね」と言って、本当に玉ねぎの皮のようなシャカシャカした光沢のあるテキスタイルを作りました。そこに大きな版のプリントをしたのですが、森の中の木の1つだけ枝がなくなっているのを、左に飛んでいる鳥がくわえているという、ちょっと宝探しのような楽しみ方もできるような柄のスカートでした。こちらのスカートを長くご愛用くださったお客様から、ウェストの部分の生地のところに、虫食いができてきたということで、ご相談いただきました。
“forest”スカート リメイク前の写真
photo: Yasutomo Ebisu
皆川:左側の鳥がこのスカートの身頃にある枝を1つくわえているというものでした。長く着ていくなか、お客様がふとした瞬間に気づくだろうデザインを大事にしようと思って描いたものだったのですが、本当に25年大切にお持ちいただいた方から、今回のリメイクをご依頼いただきましたので、華やかさと新しいストーリーを生み出そうと考えました。
“forest”スカート リメイク後の写真
photo: Yasutomo Ebisu
ヨークと呼ばれるウェストの部分のパーツに、今度は“flower crown”という花の刺繍を入れて、今度はその鳥が花を1つつまんで飛んでいるというストーリーを作り、直していきました。サイズを変更しながらも、印象としては大きく変化しないよう配慮しつつ、その頃にはなかったテキスタイルを用いて新しくデザインしました。今後の新しい可能性や楽しみが増えていくのではないかなと思います。
――次はお馴染みの“tambourine”のワンピースです。
長江:このワンピースについては、ご依頼時のエピソードを読み上げたいと思います。
“tambourine”ワンピース リメイク前の写真
photo: Yasutomo Ebisu
「結婚した頃に購入しました。妊娠中、体調が優れない日々が続く中で、夫が気分転換にお散歩に誘ってくれ、久しぶりのお出かけにこの“tambourine”のワンピースを着ました。ですが、途中で大量出血があり、そのまま入院。赤ちゃんは残念ながらお空へと旅立ちました。大好きな“tambourine”なのに、このワンピースを見ると悲しい記憶が蘇ってしまうため、新しいエピソードが加わることで少しずつ記憶を塗り替えていければと思い、今回応募しました」というエピソードです。
何かデザインの力で新たな思い出が作れたらと思い、この洋服に向き合わせていただきました。
皆川:お客様とはオンラインミーティングをしながら、思いを聞かせていただきました。もちろん悲しいのだけれども、忘れたいわけではないということが伝わってきましたし、またこの服を着たいという思いもお聞きできたので、そのことをわかっている上でのリメイクをしたいと思いました。
“tambourine”ドレス リメイクのデザイン画
Akira Minagawa
裾からチュールと呼ばれる、メッシュ状の素材に“tambourine”の刺繍をさして、それを裏地にギャザーを寄せて縫い合わせて、フレアーがたくさん出るような形に直していきました。それによって、ここから長く着られるということと、悲しい思い出がありながらも、またこの服によって喜びも一緒にこの服の中に入れていけるのではないかということと、あと、僕がリバティのためにデザインしたテキスタイルでミナ ペルホネンでも子ども服にもよく使う柄“forest wave”を裏地に用いることで、そのお子様のことを温かい記憶として、服の中にひっそりと持てるといいのかなと思っています。
このように色々な思いをどうやって洋服というデザインに含めていけばいいかを思いながらデザインしたので、とても思い出深い一着です。しっかりとコンタクトしないと直すことが難しかったと思うのですが、こういうことに意味があるんだなと今一度気づかせてくれたプロジェクトでした。
――もしかしたらこのお洋服をもう見たくないとしまい込んでしまうかもしれないぐらい、辛い出来事だったと思うんですけれど、でもそれを忘れたり、否定したりするのではなくて、違う形に変えて、新しい思い出を一緒に重ねていきたいと。大好きなミナ ペルホネンさんのお洋服だからこそ、そう思われたんでしょうね。
田中:忘れたくないというより、そこにいたという思い出を大切にしたいというお客様の思いが本当に素晴らしいなと思いました。それを具現化させて、皆さんに見ていただくことで、さらにお子さんがお腹にいた事実が素敵なことになっているなと自分は思いました。
――ワンピースの丈の下の、チュールが魅力的ですね。
皆川:もともとのワンピースのテキスタイルよりも重くならないように、なおかつ少しギャザーを入れてボリュームをつけることで、歩いた時にフリルが揺れて、それは少し明るい印象や明るい気持ちにしてくれるのではないかと思って。このチュールは、裾のところを“tambourine”の刺繍に沿って手でカットしています。それによってさらに軽い印象を持たせました。
チュールは、透けるような素材を用いたいと考え、このリメイクのためにテキスタイルから作りました。そのために少しお時間いただきましたが、この服をどうやってリメイクしていくのかをお話を伺いながら、そこでイメージしたことをとにかく最善の方法を選んで作っていくということに注力しました。
――では、次のワンピースです。
長江:“pebble”のワンピースですね。こちらは田中がデザインした刺繍の柄です。もともと20歳のお誕生日のお祝いとして買ったけれど、だんだん着なくなったと伺いました。このお客様の30歳のお誕生日が、今回の「つぐ」展の開幕日と同じで、ご本人も「ものすごく運命を感じています」と仰っていました。
田中:鉱石など、1つの小さな世界に無限の世界観が広がるようなモチーフが昔から好きなのですが、この刺繍はラメ系の糸とコットンのちょっとラフなイメージの刺繍糸と合わせて表現しました。なんでもないような石が、見る方によってはとても素敵に見えるのではないかと思ってデザインした柄です。20歳の時に購入してくださったお客様も、「本当に素敵だったんです」と言ってくださって、励まされました。
長江:このお客様は服飾の勉強をしていたので、少し専門的な会話もあって、服の形についてお客様の方から「例えばこれをツーピースにするのはどうか」というような会話もありました。
皆川:この服は、今回展示している中ではリメイクの難易度が一番高かったと思います。ワンピースも非対称、アシンメトリーなカッティングのものでした。色々なダーツ線が入った立体的なフォルムでしたので、リメイクするにあたり、どうやってバランスを取るか悩みましたし、丈を長くしたり幅を出したりしながらツーピースにしていくということで、いくつかの課題があるものでした。
結果的には、ウェストラインの切り替え線を利用し、ジャケットの裾の方にベルトのようなものをつけて、着丈を持たせました。スカートは、その切り離した部分にもう一度ヨークというパーツをつけて、ポケットをつけたり、裾のところにもう一段階切り替えを入れて、着丈をしっかりと長く出しました。
“pebble”ドレス リメイクのデザイン画
Akira Minagawa
一つひとつ、ご希望を叶えながら、お直しした後のものも洋服としてしっかりと作っていくプロセスからは、学ぶことが多くて。お客様が最終的に望んでいるものから離れず、新しい新鮮な思いも持ってもらいたいという2つの気持ちを、デザインする時に常に隣において作っていきました。実際にお客様に着心地やデザインの方向性にご満足いただけたかという確認をするのですが、この服もとても喜んでいただけたので、大変な思いをしたけれど、ちゃんとご満足にたどり着けたなっていう喜びがありました。
“pebble”リメイク後の写真
――ポケットはもともとついていたのですか。
皆川:はい。今回はヨークを設けると、もともと脇にあったポケットが随分下の方に下がってしまうので、使い勝手が悪くなってしまうと考えました。そこで、脇を1度塞いで、ヨークの片側にポケットを新たに作りました。
私たちはポケットによって仕草を作ることを考えます。ポケットの位置や深さを変えることで、仕草を美しく見せたり、素敵に見せたりすることができると思っているので、使いづらいポジションにあるポケットは閉じて、新たに必要分のポケットを作りました。点検箇所は結構たくさんあるんですよ。
着た時にどうなるか?機能面は十分に満たされているか?裏地はどのようにするか?ジャケットとスカートの裏地は一緒でいいのか、変えた方がいいのか?そんなことをコミュニケーションしながら作っていきました。ファッションブランドがお客様の意向を聞きながら直すというケースはほぼないと思うのですが、実際に取り組んでみると、新しい発見がありますし、お客様にとっても長く着たものがさらに新しい命を持って着続けられるということを再認識しました。
このプロジェクトは展覧会のために始めましたが、今後もなんとか続けていきたいなと思っています。
――随所にブランドとして大切にしている思いが現れているプロジェクトでしたが、今回の「remix」で始まったことではなく、もともと様々な面において、使い捨てではなく循環していくような試みをされていますよね。たとえば「Repair & Remake」についてお話しをお願いできますか。
田中:はい。私たちは長く愛着を持って着ていただきたいと思って洋服を作っているのですが、強い丈夫な素材だけを使っているわけではありません。皆さんに大切にしていただいているからこそ長く持つのだと思いますし、大事に着てくださっていても、人の動きや生活のスタイルによってほころびやスレが出てくることもあります。長く着ていただくためにお直しを希望されるお客様がたくさんいらっしゃるので、ブランドとしてお直しをお受けしています。
1ヶ月に約100件のお直しのご依頼をいただいています。洋服のお直しもあれば、カバンの持ち手のお直しもあり、本当に多種様々なご依頼をいただいており、その1点1点をアトリエ内の「お直しチーム」が対応しています。
――それぞれ個別に事情を聞いて、直していくのですか。
田中:はい。シンプルなお直しもあれば、リメイクという形でのお直しのご依頼もあります。アトリエにいるクリエイターやデザイナーと相談しながらリメイクしていきます。
――こちらのテキスタイルでは、プリントされた雪だるまにハグするような雪だるまが刺繍されていますね。
“lumiukko”のお直し
hand work by Kaoru Yokoo
田中:これは、横尾香央留さんという方との取り組みでした。横尾さんは20年以上前にミナ ペルホネンで働いていた方で、今はお直しなどの書籍を出されている刺繍作家さんです。横尾さんと、お直しをメインとした展覧会をお店で開催させてもらったのですが、横尾さんとのお直しの特徴は、そこにもう1つストーリーを乗せていくことが多いということでした。この雪だるまの刺繍は、お母さんが子どもを褒めることを夢で見たことから、雪だるまが帰ってきた子どもを褒めている姿を、穴が開いてしまっているところに刺繍を施して、直してもらっています。
――私が子どもの頃は親戚のお下がりばかりを着ていたので、そんな自分がちょっと恥ずかしく、新しい洋服を着たいなと思っていました。新品に買い替えなくても、穴が開いたり、サイズが変わったり、ほつれたりしたところを前向きに、ポジティブに、クリエイティブに転換して、楽しいこととして、より素敵に展開する発想がすごく素敵だなと思います。他にもテーブルウェアのリメイクの試みもされていますね。
minä perhonen×PASS THE BATON Remake tablewareシリーズより
皆川:これは、洋服に限らず色々なものを再生したり、B品として避けられたものにもう一度デザインを加えることで新たな価値を作っていこうというプロジェクトです。お皿は、焼いた後に黒点という小さな点がついてしまったり、かすかな傷のようなものができてしまったりして、それでB品とされたり、時には廃棄されたりする。そのB品を生かしていこうと考えて始めたプロジェクトです。
このお皿も、裏に小さな点があるぐらいで、日常生活には全く問題がないかもしれない。ならば、新たに自分が描いたドローイングをプリントすることで、新しい絵皿として楽しんでいただこうと。そういう意味では、ファッションに限らず、生活に使われるデザイン全てにおいて使えるものを使っていこう。インダストリアルの均一な製品だけを良しとするのではなくて、結果的に小さな欠陥、ネガティブなポイントがあったとしても、1つの答えとしてまた新たな価値があることを提案していています。
これは人の価値を少し緩くするというか、許容を広くするというか、そういうことだと思うのです。それが環境的にも負荷を減らすことになると思いますし、そこまで作った労力を無駄にしないということもあります。ファッションに限らず、こういう取り組みもずっと続けています。
――「piece,」についても教えてください。
田中:ブランドの初期から、洋服の型を裁断した後に残るハギレで、ミニバックやエッグバックというバッグを作っていました。その後、「piece,」という名前で、ハギレをパッチワークしたデザインに取り組むようになりました。洋服を作っていく間にどうしても出てきてしまうハギレをうまく活用して、新たな価値を生んで、柄の見え方が1点ずつ異なるという点ではユニークピースとして、皆さんに楽しんでいただける商品を作っています。
“piece,”project
photo: Hua Wang
「つぐ」展を見ていただくと分かると思いますが、テキスタイルを1つ作るのに、とてもたくさんの方々の思いやお仕事が詰まっている事実があり、それを思うと、1センチ角の生地でさえも愛おしく思えてくるんです。だからこそ、それをどうにか使えないかなということで活用しているプロジェクトです。
――本当にすごくポジティブな転換ですよね。
皆川:「僕が10代の頃、縫製工場で裁断師の仕事をしている時に、洋服を裁断した後の余ったものを全部捨てていたんです。今でも一般的にほぼ捨てていると思うのですが、それがとても忍びないなと思いました。工場の皆さんが一生懸命作った素材なのに、洋服を裁断した後の残りを捨ててしまうのは本当にもったいないなというところから活用を考えていったものが「piece,」で、今では自分たちにとって欠かせないプロジェクトだなと思います。
ハギレとpala bag
photo: Keita Goto
――改めて「つぐ」や「remix」というコンセプトについて教えてください。
皆川:「つぐ」というタイトルをつけたのは、「chorus」という最初の部屋で展示しているような、1つのデザインから派生して色々なデザインになるということや、デザインが自分たちのアトリエから工場に行き、工場でテキスタイルになり、その後縫製工場で洋服にりという、仕事が繋がっていくという様を見ていただいたり。様々なものの継承について、また、会社を続けている方たちの理念をどうやって繋いでいくかという「継ぐ」だったり。つまり、私たちの活動は「つぐ」ということの連続だと気づき、今回の展覧会のタイトルにしています。
それぞれの部屋に音のワードをつけているので、この「remix」も、色々な曲をアレンジして作り変えるようなことと、リメイクということを重ねたネーミングにしました。
「remix」は、修理をして物理的に使い続けられる状態にするだけではなくて、デザインそのものを変えることで、愛用者の人生に合わせていく。ファッションの世界ではなかなかブランドが作ったものをもう一度ブランドのデザイナーやクリエイターたちがお客様と相対しながら直していく環境が社会の中で作れていないのではないかという視点からこの取り組みが始まりました。実際にやってみると、直すというだけではなくて、変化させるということもとても大事な自分たちの役割になるのではないか、ということに気づかせてもらいました。
――最近は使い捨ての文化というか、ファッションが手軽に手に入る代わりに穴が開いたりくたびれたりしたら、それを捨てて新しいものを買おうということが多くなってきたのではないかと思いますが、それと真っ向から異なるアプローチを取っているミナ ペルホネンさんの思いと試みが結集したプロジェクトだったと思います。
一方で、私たちもなんとなく本能的にこのままではいけないんじゃないかと感じていて。何か循環させていかなければいけない、今まで自分たちが無意識に受け継いできたものを今度は意識的に継いでいかなければいけないということを、私たちは気づき始めていると思うんですね。それをすごくポジティブに、楽しく、ハッピーになれるような形でお示しいただいた素敵なプロジェクトだと思っています。本日は、本当にありがとうございました。
文:五月女菜穂
