熊本の伝統工芸 + minä perhonen

2026.07.04 collaboration

100年以上の歴史を受け継ぐ熊本の伝統工芸と、ミナ ペルホネンのものづくりが対話を重ねました。
思わず笑みがこぼれるような、人の喜びにつながる力を宿した「おばけの金太」や「からくり干支人形」。
誰かを想い、ひと針ひと針に願いを込めてつくられる「肥後てまり」。
大切なものをしまい、時を重ねながら愛着を育んでいく「花手箱」。
それぞれに受け継がれてきた技や記憶、暮らしへのまなざしは、ミナ ペルホネンが大切にしてきた「ものをつぐ」という思想と深く響き合います。
継承とは、変わらずに守り続けることではなく、新たな出会いによって未来へ手渡していくこと。
この場所で生まれた対話と共鳴、その生成の過程を、session を通して感じていただけます。

●おばけの金太

作り手:厚賀新八郎

真っ赤な顔に黒烏帽子。紐を引くと目玉がひっくり返って長い舌を出す、からくり人形。加藤清正が熊本城を築く際、こっけいな風貌と仕草で人々を笑わせることが上手だった「金太」という足軽がおり、「おどけの金太」と呼ばれていた。19世紀中頃(嘉永年間)、この金太の伝説をもとに、京都から熊本に移り住んだ人形師の西陣屋彦七(厚賀人形店5代目)がからくり人形を作り出したことが原型と言われ、次第に「おばけの金太」と呼ばれるように。以来、代々、厚賀人形店で製作が続けられている。現在の当主である厚賀新八郎氏は10代目。

○ほしのにわの金ちゃん
金太の烏帽子をミナ ペルホネンのテキスタイルで作ってはどうか?という発想から始まった今回のコラボレーション。烏帽子には“star garden”の生地が選ばれ、この生地の柄から目がアレンジされ、更には髪型や胴体もオリジナルに…と、大胆なデザインの金太が生まれた。

○からくりセバスちゃん
厚賀人形店がここ30年ほど取り組んでいる「からくり干支人形」の技術を用い、“alive”の手を挙げる熊のセバスチャンが立体化された。
背面の紐を引っ張ると、左手をまっすぐ上にあげ、意見を述べるように口を開く。2011年に発表された“alive”の着想は、人里に熊が現れるというニュース。2026年の今、再びアクチュアルな問題となっている。

●肥後てまり

作り手:鶴田美知子(肥後てまり同好会)

芯にヘチマを用い、フランス刺繍糸で様々な幾何学文様を施すのが肥後てまりの特徴。江戸時代、お城に勤める奥女中たちが作り始めたものが全国各地の城下町に伝わり、肥後藩でも代々受け継がれるようになった。設計図などは特になく、女性たちの間で作りながら受け継がれてきた。「あんたがたどこさ」の唄を生んだのはこの肥後てまり。
一時姿を消していたが、1968 年に「肥後てまり同好会」によって復活。鶴田美知子氏は同会の発起人である後藤照氏に師事し、1993年に跡を引き継いだ。伝統の柄は17 種あまりで、刺繍糸の色の組み合わせを変えるだけでも表情は大きく変化する。またアレンジを加えたり、オリジナルの柄を施したりと、デザインに限りがないことも、肥後てまりの大きな魅力である。

○肥後てまり+ anemone
さまざまな植物模様がある肥後てまりだが、シンプルに一色、それも輪郭取りによる表現というのは、通常行わない。また“anemone”特有の花弁の再現には、40本あまりの細かな補助線を引く工夫がなされ、作り手にとって大きな挑戦となった。
“anemone”は、ミナ ペルホネンを代表する“tambourine”をもとにして生まれ、そこにはデザイン同士の「つぐ」がある。テキスタイルという平面から肥後てまりの球へと翻案される中で現れた姿に、また別の「つぐ」を認めることができる。

○肥後てまり+ choucho
ミナ ペルホネンのアイコンのような存在である“choucho”が羽ばたく肥後てまりは、「星つなぎ」という伝統柄とのコラボレーション。
全体が白系統の5色の糸で構成され、色のグラデーションと光の受け方により、まるで珠のような輝きを放つ作品となった。

●花手箱

作り手:住岡孝行(住岡郷土玩具製作所)

花手箱はきじ馬と合わせて、800年以上もの長い歴史を持つ、人吉地方の代表的な木工工芸品。
壇ノ浦の合戦で敗れた平家の落人たちが人吉の奥地に逃れ、生活の糧として作り売ったと伝えられている。花手箱はヒノキやスギを製材し、箱に組み立て、地塗りを施したところに鮮やかな椿の花が描かれる。サイズは10段階あり、入れ子になる。人吉の春の市(旧暦の2月に行われる)では「市箱(いちばこ)」と呼ばれて売られ、人々は女の子への贈り物として買って帰るのが習わしだった。一度廃れかけたが、明治時代後期に住岡郷土玩具製作所の初代・住岡喜太郎氏が復興。2 代目の忠嘉氏、そして3代目の孝行氏へと受け継がれ、2025 年には100周年を迎えた。

○花手箱 + soda water
“soda water”とのコラボレートは、一見して花柄を代名詞とする花手箱とはかけ離れているようにも思われる。しかしかつて花手箱には、青海波やうず巻きなど、花以外の模様が描かれることがあった。今回の取り組みをきっかけとして、隠れていた花手箱の別の姿にも光をあてることとなった。

○花手箱 + flowerscope
ミナ ペルホネンの椿の柄である“flowerscope”が花手箱とコラボレーション。背景の色をシンプルに白にすることにより、本造り(木箱に和紙を貼り、その上から絵付けをするやり方)の風合いが生まれた。また通常は黒い縁取りを施すが、あえて白い縁取りがなされたのも大きな特徴。

画像提供:熊本県伝統工芸館
Photo: Masami Miyai

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